庭を中心とした配置計画

今回の離れの計画は、母屋の完成から約１年半後に始まりました。将来的に離れを作ることは決まっていたので、その前提のもとに母屋の配置が決まっているのですが、離れができるまでは道路から庭が丸見えの状態でした。庭いじりが大好きなクライアントのために、母屋には室内から庭の景色を楽しむための大開口が設えられていて、道路からの視線がやや気になる状態でした。
今回の計画の目的の一つはその視線を遮ることでしたが、塀や生け垣で安易に仕切るのではなく、庭を囲うように建物を配置することでプライベートな屋外空間を生み出す計画としました。塀がないので街と緩やかにつながり、古都鎌倉でよく見られる路地にいざなわれるように、庭へと至ります。

変形敷地のデメリットをメリットに変換する

この敷地は見た目の広さに反し建築可能範囲が極端に狭く、尚且つ変形敷地であるという非常に設計者泣かせの計画でした。そんな中、何度も打ち合わせや検討を繰り返し導き出したのがこの六角形の形状でした。出入り口の幅よりも内部の方が幅広くゆとりのある作りになっていて、その張り出した部分は、運転席側のドアの開閉と人の乗り降りのためのスペースに充てられています。変形敷地であることを逆手に取って、使いやすい空間を実現しています。
デメリットが多すぎてなかなか買い手がつかないような土地でも、アイデアや工夫次第でメリットに変換できるだけでなく、建物そのものの特徴や魅力へと昇華させることができるのが建築の面白いところです。

機能美を追求する

内部は駐車スペースをメインに、敷地の高低差を利用して２段上がったサービススペースが設けられています。
駐車スペースは先述の通り運転席のドアをフルオープンにできるほどのゆとりがあり、張り出した部分の壁には大容量の可動棚が設置されています。サービススペースにはBBQテラスに向かってカウンター収納が設けられていて、食材などの提供がスムーズにできるようになっています。また床下収納やロフトへもここからアクセスします。
見た目の美しさと機能性のどちらも両立した機能美を追求した建築になっています。

遊びの要素をちりばめた秘密基地のようなガレージ

この建物には様々な遊びの要素がちりばめられています。敷地内には予備の駐車スペースが２台分用意されているので、そちらに車を移せばガレージ内に大きなスペースが生まれます。壁面にあらかじめ用意された端子に機材をつなげば、あっという間にホームシアターの完成です。その他にも車や庭を見下ろせて寝泊まりのできるロフトや、床を拡張したりハンモックを吊るすための化粧梁、BBQテラスやワインクーラー、屋外シンク、太陽光パネルなどが用意されています。
また、いかにもガレージ然としたイメージから遠ざけるためにロール式やオーバースライダー式ではなく、木板縦張りの電動横引きシャッターを採用しています。

大屋根の下のBBQテラス

この建物には一枚の大きな片流れの屋根がかけられていますが、母屋側の約１/４にあたる部分は屋外テラスになっています。作り付けの固定ベンチと折り畳み式のカウンター、ハンモックやスイングソファを吊るすことができる化粧梁など、将来的な拡張性を想定した作りになっています。
また、このテラスは既存のウッドデッキを介して母屋とつながる重要なスペースでもあります。別々の時期に建てられた建物ではありますが、それを感じさせない敷地全体として一体感のある空間とすることで、生活の幅が何倍にも広がります。

→「庭を内包する家」