ファッションと家具の垣根を越える、ランドスケーププロダクツ
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Jun. 07, 2023
ファッションブランドと数多くのコラボレーションを実現してきたインテリアブランド「Landscape Products (ランドスケーププロダクツ)」へ話を伺いました。
実にコラボレーションが盛んなインテリアブランドは非常に稀有な存在。今回、東京の千駄ヶ谷にあるLandscape Products旗艦店「Playmountain (プレイマウンテン)」へ訪問し、何故このような異業間コラボを続けることが出来るのか?また、Landscape Productsのブランド背景まで紐解きました。
そして、Landscape Productsは家具の製造販売のみならず、自邸や店舗などの内装リフォームやリノベーションまでをも手掛けているという事実が。つまり、マイホームがファッションやインテリアショップのような空間に昇華出来るということ。これらをPlaymountainの企画・運営を務める今中氏よりお話し頂きました。
ファッションブランドとのコラボが盛んなランドスケーププロダクツ
-まず、こちらのPlaymountainではどのような価値基準でセレクトを行っているのでしょうか?
今中:自分たちが良いものだと思ったもので揃える、というのがコアにあります。デザインや年代、国籍など全く問わず、ただ面白いものを選んでくるという強いこだわりを私たちは持っています。
例えばミッドセンチュリーをコンセプトにしている場合、アメリカのカリフォルニアにルーツがあるのでそこのものだけしか取り扱わない、ということがあると思います。私たちの場合、ミッドセンチュリーの製品も取り扱いますが、そこを統一させるということは全くありません。
それは素材でも同じことが言えます。木材など天然の素材は好みの関係で多くはなるのですが、一方でプラスチック製品は取り扱わないというルールもありません。
近年のサスティナブルという風潮もわかりますが、色々な素材を使い、用途に対して適したものを使っているというのが良いプロダクトだと思います。色々なスタッフが関わり、様々な目線からものを集めています。
-それによりバラエティーに富んだラインナップが実現されているのですね。面白いものを集めるといっても、ブランドイメージに沿う必要があると思うのですが、何か共通の認識や方向性みたいなものあるのでしょうか?
今中:私たちは「Man Made Objects (マンメイドオブジェクト)」というキーワードを掲げ、ものづくりや仕入れに取り組んでいます。”人の持つ力がきっちりと発揮されたもの”という意味ですね。それが私たちの根底にあり、集めてきたものの最大公約数がそれを表現しています。
-ランドスケーププロダクツがファッションと親和性が高い理由は何でしょうか?
今中:立ち上げ当初からファッションというものを常に身近に感じてきた、というのが大きく関係していると思います。私たちは元々、裏原の中心エリアに「Famouz(フェイマス)」というストリート系のブランドがあり、そこを間借りをしてスタートしています。洋服を買いに行く感覚でインテリアに目を馴らすことができるお店、というのが成り立ちですね。現在は、アパレル関係の企業やショールームなどが多いこの千駄ヶ谷に移り、裏原の感覚に近い人たちの流入も多くありますね。
-2000年にPlaymountainがオープン。当時は裏原と呼ばれる界隈で、数々の有名ブランドが立ち上げられた時期。その時から裏原カルチャーに精通し、数々のコラボを実現。
今中:ランドスケーププロダクツは裏原のストリート系という感じではないのですが、その界隈の方ともコミュニケーションが多く取れていますし、インテリア業界とももちろん深い繋がりがあります。ファッションとインテリアの間にいた存在であり、そのバランス感覚が絶妙であると思います。そういった背景があり、コラボレーションの機会も増えたのだと感じています。
コラボ史について
-これまでコラボレーションも多くあったと思いますが、そのコラボ史について伺います。
今中:一番最近のコラボレーションから言うと、「NOMA t.d.(ノーマテキスタイルデザイン)」さんとオリジナルプロダクトを製作しました。ブランドのテイストは少し私たちとは違うのですが、根底にある好きなデザインや影響を受けた作家が近いような気がして、私自身が企画の窓口となり進めていきました。
彼らのテキスタイルデザインを彼らの得意とするシルクスクリーンの手法でぼくらのプロダクトに転用するだけでなく、何か踏み込んだことをしたいですね、という話をし、物に落とし込みました。
今中:このPlaymountainのすぐ向かいに位置する「TEMBEA(テンベア)」さんというブランドとも少し前にコラボをしました。ポーチやトートバックといったアイテムを展開しました。TEMBEAさんとは同じエリアにお店を構えていたりして、かなり親しくさせていただいています。近隣だからというわけではないのですが、感覚が近いというのもありますね。弊社が店舗の内装も手がけさせていただいたりしました。
あとは、「Yaeca(ヤエカ)」さんともコラボをし、パジャマを作ってみたり。かなり前にはなるのですが、「PORTER(ポーター)」さんや「BEAMS(ビームス)」さんとも共同でバックも製作しました。
-数々のブランド名が挙がりましたが、やはりルーツとなる裏原の繋がりから生まれたものもあったのでしょうか?
今中:そうですね、コラボのきっかけというのは、多くは繋がりから生まれてくるものですからね。コラボレーションというかたちでなくても、関わらせていただくこともあります。例えば、「YOHJI YAMAMOTO(ヨージ ヤマモト)」さんとはOEMというかたちで、既存のアイテムの色をYOHJIさんのイメージに添って企画しました。私たちが自分達でものを作っていることを知ってくださっていて、何か一緒にできないかというところで始まりました。
ファッション好きに支持されるこだわりのプロダクト
-ランドスケーププロダクツの製品についてより詳しく伺いたいと思います。Playmountainに入ると、私の目にはまずソファたちが飛び込んできました。
今中:Tac Sofa(タックソファ)とPerch Sofa(パーチソファ)ですね。まず、Tac Sofaはかなりロングセラーな家具です。当店にディスプレイしているのが全てワントーンのものですが、カスタマイズが可能です。背もたれの一部の生地を変える、というのが定番にされる遊び方ですね。在庫を元手にお客様からオーダーいただいたタイミングで製作に入るので、生地を変えたりカラーを変えたりと遊びが楽しめるのも魅力の一つです。
さらに、若干傾斜がかかっているフォルムなので、座った時に体全体を預けられる安堵感があり、座り心地が良いのも人気の理由の一つだと感じます。
今中:そしてPerch Sofaも非常に人気の製品です。Tac Sofaよりも大きめのソファをお探しの方におすすめしています。2メートルを超えるサイズ感で、背もたれを外すとデイベッドにも、ゆったりと寛ぐことができるというのが特徴の一つです。
今中:当店にあるのはレザー生地のPerch Sofaですが、キャンバスやファブリックなど他の生地でも製作が可能となります。Tac Sofaのように空間や好みに合わせてカスタマイズすることができ、遊びを楽しめる仕様となっています。
今中:続いてこちらは、Marmoleum Series(マーモリウムシリーズ)というラインナップです。3,4年ほど前にこのシリーズは立ち上がり、弊社のオリジナルアイテムの中でもかなり人気のあるシリーズになってきています。
-マーモリウムとはどういった意味なのでしょうか?
今中:マーモリウムは素材のことで、元々建築用の材料として床などに敷くような素材です。手触りでいうと塩ビのような感じです。建築家のアルヴァ・アアルトがテーブルのトップに使ったり、スツールのトップに使ったり、ということで周知されていると思います。リノリウムという素材をご存知の方もいるかもしれませんが、リノリウムのカテゴリーの中の一部がマーモリウムなのです。要はリノリウムと同様になります。その素材を建築材料だけでなく、なにかプロダクトに落とし込むことはできないかな?という着眼点で開発を進めたシリーズです。
-建築材料をプロダクトに落とし込むというのは確かに珍しいと思います。マーモリウムという素材にはどのような特徴があるのでしょうか?
今中:マーモリウムには、曲げることができるという特性があります。それを活かして時計やミラーの曲線に昇華させています。柔らかい印象のデザインを素材の特性を利用して表現し、普段と違うアプローチで作りました。
-店舗に入り、次に目に留まったのが綺麗に並べられていた陶器たちでした。カラーや形状も様々で、多くの種類がありますよね。
今中:「HEATH CERAMICS(ヒースセラミックス)」というカリフォルニアの陶器のブランドの製品ですね。1940年頃から続く、歴史がとても長い陶器ブランドです。当店でもとても人気があります。
全てハンドメイドで作られており、昔から手法やデザインがほとんど変わっていません。カラーバリエーションも豊富で、色の出し方も絶妙です。ヒースセラミックスは、私たちだけが日本で正規の代理店として扱っています。
今中:ヒースセラミックスが人気の理由として、デザインだけでなく機能性にとても優れているところもあります。電子レンジや食洗機などでも傷まず使用できます。器というのは日常でよく使うものであるので傷みやすいと思いますが、ヒースセラミックスは長く安心して使用できます。
-多種多様なラインナップで、新しい発見があります。新作アイテムは何かありますか?
今中:新作は、Horse Blanket Research (ホースブランケットリサーチ)のアイテムですね。私たちが運営しているレーベルの一つです。元々アパレルの「リサーチ」さんが作っていたシリーズですが、現在は私たちが開発をご一緒させていただいています。基本的にはウールのブランケットが中心のレーベルだったのですが、私たちが運営を引き継いだタイミングで少しバリエーションを増やしてみよう思い、現在はキルティングやタオルケットのようなシリーズも積極的に作っています。
今中:ホースブランケットのキルティングに関しては、私も実際に愛用しています。子供がいるのでブランケットはどうしても汚れやすくなったりするのですが、水洗いができるのでどんどん使えます。生地も頑丈で、あまり細かいことは気にせずに使えるので重宝しています。
-デザインに魅力があるというだけでなく、実用的なのも嬉しいですね。
今中:ヒースセラミックスにも同じことがいえますよね。しっかりとデザインされていて、使う人のことも考えられているなと思えるものが本当に良いプロダクトですよね。
店舗デザインも手がけるランドスケーププロダクツ
-先ほど伺ったTEMBEAさんのように、ランドスケープさんは店舗の内装も手がけられているのですね。家具の製作に限らず、他にどのような事業を展開されているのでしょうか?
今中:大きくは小売、製造販売、飲食、Playmountainの運営、内装デザインなどです。飲食は千駄ヶ谷に「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」というコーヒースタンド、「Tas Yard」というカフェ、「Pho 321 Noodle Bar」というベトナムのフォーを中心に提供する飲食店を運営しています。新宿にも焙煎所があって、コーヒーの豆を自家焙煎しています。そこで各店舗で出す焼き菓子もラボで製造しています。
-かなり多種な事業を展開されていますね。飲食と家具だとかなり角度が違うように思いますが、なぜ飲食も展開されているのでしょうか?
今中:飲食業がしたいというよりかは、このエリアで生活する中で欲しい店を作っていくという考えで始まりました。そうすると必然的にコーヒースタンドだったり、ベトナム料理だったりしました。
今中:そして、各店舗の内装も自社で手がけています。私たちが作り出す空間や世界観も実際に感じていただきたく、ショールームみたいに機能するというのも特徴の一つなのです。その店舗をみていただいて私たちに声がかかるというのも自然な流れとなります。
店舗の内装だと、先ほどもお話に挙げた「TEMBEA」さんは、京都のお店と千駄ヶ谷のお店も手がけさせてもらいました。これまでブランドとプロダクトのコラボレーションをさせていただく中で、感覚が近いということでお声がけいただいているということがあります。
今中:あとは、最近開業した「VISON(ヴィソン)」という大きなホテルとショッピングモールが並ぶ複合施設が三重県にあるのですが、そのホテルの内装を手がけさせてもらいました。Playmountainとしてはアート作品を選んだり、家具を選んだりという部分に関わらせていただきました。カラーや素材の組み合わせにもこだわったり、VISONのイメージに沿って独自のアイデアを取り入れたりと、私たちの世界観も融合させていただきました。
今中:アパレルブランドであったり、ヘアサロンであったり、これまで数々を手掛けさせていただきました。ブランドや企業のイメージに沿った空間を目指し、私たちが持つ視点ならではから生まれるデザインを空間に落とし込んでいます。
住宅の内装設計から家具のトータルコーディネートも可能
-ランドスケーププロダクツでは店舗の内装だけでなく、住宅も手掛けているのでしょうか?
今中:はい、住宅も手掛けております。住宅に関しては、自分達がしたいデザインを押し付けることはしていません。クライアントさまありきなので、生活や仕事の部分までしっかりとコミュニケーションを取った上で、一緒にデザインを仕上げていくというかたちです。引き渡したタイミングが一番空間がかっこよく、暮らしていくうちにどんどんギャップが出てきてしまうことは避けたいですよね。暮らしていく中でどんどん味が出て良くなっていく、というのが良い内装設計だと思います。
-家具に関しても、全てランドスケーププロダクツの製品を取り入れることができるのでしょうか?
今中:その通りです。私たちは空間にあった家具も提案でき、導入することができます。
今中:例えば、私たちが新築で建てたこちらの「登別の住宅」では、内装設計の担当が、その自宅にベストなソファもデザインして納入しました。そして、そこから小売のPlaymountainチームとミーティングを重ねて、実際にプロダクトにしていこうという流れも生まれてきています。私たちらしい流れですね。
-その住宅に合ったプロダクトを製作するだけに止まらず、そこから新しい製品が生まれる場合もあるのですね。
今中:こちらの帯広の住宅のソファも私たちで新しくデザインしたものです。
今中:こちらの事例では、内装設計からどのようなデザインの家具がふさわしいのか、ということを考え抜きプロダクトに落とし込みました。家具から空間を考えたり、空間から家具を考えたりとクライアントさまとコミュニケーションをとりながら進めていきます。
このように私たちは、内装設計から家具のデザイン、そしてリフォームやリノベーションまで、一貫したコーディネーションを行うことで、クライアントさまの理想的な空間を実現するお手伝いをいたします。お客様のライフスタイルや好みに合わせ、最適なプランを提案させていただきます。
-今後ランドスケーププロダクツを知る人たちに向けて一言お願いいたします。
今中:Playmountainはあまり大きな店ではないのですが、フランクに立ち寄っていただければなと思います。お店に興味がなくても内装設計に興味があるとか、カフェに興味があるとか、色んな入り方で構わないので、まずは店舗にきてお話をしながら、私たちのこと知っていただければなと思います。
現在まで様々なコラボレーションが在り、さらに店舗内装などでもファッション業界と深く関わりを持ってきたランドスケーププロダクツ。オリジナル製品をはじめとし、家具としての型にはまらない活動は、住宅の内装設計にまで至ります。家具×ファッション×住宅といったジャンルを横断したライフスタイルが好きな方はぜひ問い合わせてみてほしい。きっと新しい発見があるはず。”Man Made Object”をコンセプトに繰り広げられるユニークなその価値観を、皆さまの生活にも取り入れてみては?
店舗詳細
Playmountain(プレイマウンテン)
住所:〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-52-5 原宿ニュースカイハイツアネックス#105
TEL:03-5775-6747
営業時間:12:00 ~ 18:00 (月曜定休)
Email:playmountain@landscape-products.net
Web:http://playmountain-tokyo.com/
Instagram:@playmountain _tokyo
Facebook:Playmountain
Landscape Productsについて
2000年12月にオリジナル家具、雑貨を製造販売する会社として営業を開始。
創業者の中原慎一郎のモダンデザインを中心とする家具輸入会社での経験をもとに、独自のモダンなスタイルで家具のみならず住宅やオフィス、店舗の設計施工も手がける。千駄ヶ谷にインテリアショップ「プレイマウンテン」を運営し、喫茶店「Tas Yard」、ベトナム料理店「Pho 321」など飲食業も展開しています。
●Landscape Products
Web:http://landscape-products.net/
ランドスケーププロダクツの取扱店についてはこちら
●Landscape Products Interior Design
Web:http://landscape-products-interiordesign.net/
Email:interior@landscape-products.net