DIG IN THE SKY
大阪都心の住宅。採光のため、ふたつの中庭をもつ3つの棟からなり、部屋と部屋はそれぞれ中庭を横断するチューブ状の廊下あるいは階段室でつながります。通過頻度の高い部屋にはたくさんのチューブがつながり、住宅内には幾重にもループを描く動線が実現します。部屋と部屋の関係は一義的には決まらず、動き方によって、関係も空間の様相も変化します。また空に穴をうがつチューブは、内部空間同士をわけながらつなぐだけでなく、建てこんだ周辺の環境をさえぎりながら、かいまみせます。
空にアナをほる
1階の広いピロティは駐車スペースと趣味の自転車整備の場所。夜は中庭越しの光がピロティを照らします。
空中を舞うチューブ
1階の一部がピロティであり、宙にういたチューブは、さらに中庭を斜めに横切ることで、部屋と部屋、部屋と隣家、部屋とピロティ・街路のあいだの視線や喧騒をさえぎったり、垣間見せたりします。またチューブの外壁で反射された自然光は、さまざまな角度で室内にさしこみ、さながら幾重にも屏風がたっているように、チューブとその向こうに見える風景とが重なり、またずれあって、抑揚にとんだシークエンスをうみだします。
ループ
3階から2階に降りるチューブが2本あることで、この住宅内には袋小路でない、立体的にリンクされたループができあがりました。目的の場所へ幾通りもの経路が考えられる立体都市のような室内は、また中庭越しに立体的に周囲の都市へとにじみだし、つながってゆき、個室やドアによって閉ざされない新しい居住感を、この入り組んだ都市の中で享受することを可能にするでしょう。
[Photo : Shigeo Ogawa]