仕事場を兼ねたシニア世代の住宅
子育てを終えたご夫婦が日々の生活を大切に暮らしていく終の住まいです。 生活の中心となる2階では、南東に設けたテラスを囲むようにリビングとダイニング配置。穴を開けた屋根や壁で囲んで室内化したテラスは、周囲の視線を気にすることなく季節の移り変わりを身近に感じながら暮らしていくことを可能にしています。半層吹抜けたリビングに繋がった3階には、遠くの緑を堪能できるプライベートテラスを持った寝室があります。
白と黒の箱で構成した外観
2階建ての白い箱と3階建ての黒い箱を組み合わせた構成の外観。道路側の黒い箱の外壁は、手作りの風合いを感じられるガルバリウム鋼板の一文字葺きで、道路際の植栽とシンボルツリーが街並みに彩りを加える。3階の開口は、遠くの林の眺望が楽しめる展望テラス。2階の開口は、目隠しにファイバーグレーチングを使った物干しテラス。
階段が吊られた玄関ホール
スチールの玄関扉とインターホンを組み入れたパネルは溶融亜鉛メッキのリン酸処理。内外の床を同じタイル仕上げとすることで広がりを生み出し、玄関からはポーチを通してシンボルツリーを見せている。2階への階段は一部を吊り材で浮かせて下足収納や箱階段部分と組み合わせ、床タイルの素材感とも対比させ、客を迎え、2階へと誘う印象的な玄関としています。
音楽室
音楽関係のお仕事をされているご主人が、時間を気にせずにいつでも仕事に集中できるように完全防音した音楽室。ドラムやサックスも近隣への音を心配することなく演奏できる、遮音性能D-70レベルの木造の防音室。正面の窓からは自然光が入り、庭の緑も見えて息抜きできる。右の扉は室内側のスチール製防音ドアでガラスの小窓付き。外側にはもう一枚木製の防音ドアがあります。
リビングテラス
階段を上がってくると一挙に空間が広がる開放的な場所です。ここは室内化テラスに面したダイニングで、テラス側にはプランターの緑や切り取られた空が見える。壁や庇で囲まれた室内化したテラスは、LDKに明るさと安心感をもたらし、自然と住まいの関係を近づいてくれる貴重な場所です。仕事の息抜きに緑を手入れしたり、テーブルを出しでお茶を飲んだり、様々な使い方ができますが、日常の暮らしに四季折々の変化を届けてくれる場所にもなっています。
ダイニング
室内化したテラスに面したリビングとダイニングは斜めの関係になっていて、リビングはフラットな床で、ダイニングは400mmの段差のある床で外とつながっています。400mmはダイニングチェアと高さを揃えた、座るのにちょうどいい高さで、ここに座って会話したりタブレットを見たりなど腰掛けとしての機能を持たせています。ダイニングテーブルが置かれる、キッチンの腰壁はステンレスバイブレーション仕上で、再使用される木のダイニングテーブルや床のタイルに合う素材感として使ったものです。
キッチン
キッチンはペニンシュラ型の対面式でガスコンロは背面にあります。機能重視の既製品ですが、腰壁は建築工事として、インテリアの調和を図っています。床はダイニングと同じタイル貼(300×600mm)なので汚れやお手入れが簡単。腰壁の立ち上がりは、継ぎ目のないステンレスバイブレーション仕上なので、水に強くお掃除も簡単にできます。キッチンの奥にはデスクと本棚を造作した家事コーナーがあり、ここは物干しテラスにつながっているので、家事がとても効率的にできる間取りになっています。
リビング
リビングは室内化したテラスを介して外と繋がった、守られた落ち着きのある場所。テラスとは段差無く大きな窓でつながり、濃いブラウンの床の色を揃えることで、内外の連続感を強めています。また、リビングは天井が高く、上部には寝室のある3階や屋上テラスが見える開口があり、立体的な広がりも感じる場所になっています。天井の板張りはレッドシダーです。
洗面 物干しテラス
キッチン横の家事コーナーから、室内的な物干テラスを通って洗面室へ行ける、雨に濡れないもう一つの動線を設けて、家事が効率的にできるプランにしています。物干しテラスの壁には、光や風は通すが視線は通しにくいファイバーグレーチングを使って、外から見えにくい目隠しにしました。物干しテラスを通して、洗面室にも光や風を取り込みます。
寝室 ホール
3階にある寝室は、気候のよい季節には、階段側通路との間の引き戸を開け放って、外の展望テラスも含めた広々した空間として使います。展望テラスは開放的でありながらプライベートな空間で、遠くの木立の眺望を楽しめ、この景色は階段の上り下り時にも見ることができます。通路側には洗面付きのトイレが、造り付け本棚の後ろにはウォークインクローゼットがあり、部屋がスッキリと片付くように十分な収納も用意されています。
階段
この家の玄関から3階までつながる階段には、風や光を1階まで取り込む機能を持たせるとともに、部屋の延長として室内に広がりを与える役目を持たせています。インテリアの一部として、他の素材とも調和した美しさが求められるため、細部の検討を重ね、最小限の部材で構造的に成立する軽やかな階段を実現。階段使用時には下階の様子や遠くの景色も目に入り、上がり下りが楽しくなる階段になりました。
[Photo : 大沢誠一+Archiplace]