家族5人がのびのびと暮らすコンパクトモダン住宅
ゆとりのあるLDKと6畳以上の4つの個室、ウォークインクローゼットを限られた予算、すなわち限られた床面積に納めることが求められたプロジェクトです。廊下などの無駄なスペースを極限まで減らし効率的な平面計画を突き詰めることで、20畳以上のLDKに加えてパントリーを確保することができました。
お施主様は2年間設計者を探し求めた末に弊社を訪ねてこられたそうで、施工中に家族がひとり増えるという嬉しいハプニングもあり、設計者冥利に尽きる非常に思い出深いプロジェクトとなりました。
街並みの一部となるファサード
敷地は新たに区画された住宅地内にあります。敷地を訪れた際、日本中どこの地域でも見かけるような無個性な家々が立ち並び、街並みに表情がないように見えました。お施主様のご要望は、道路側からのプライバシーは守りつつ、庭に対しては開放的な家にしたいとのことでしたので、道路側はシンプルにしつつも、見る角度によってガラス面が際立つ違った表情が見えるような外観としました。また、一日の時間の流れや一年を通して季節の変化が感じられるように外構計画を検討し、照明計画と併せて豊かな街並み・景観づくりの一助となるように配慮しています。
コストコントロール
いくら予算が限られているといっても、やはり空間に個性を出したいですし、せっかく設計事務所を訪ねてこられたのでお施主様もそれを望んでいらっしゃる方が多いです。
今回の場合は庭がある南面が開放されていることが重要だったので、それ以外の3方の外壁は安価な素材であるサイディングとし開口部も必要最小限としています。一方、南面には大きな開口を設け、素焼きタイルや杉板など質感の異なる仕上を使い、見た目の違いだけでなく素材感の違いでもコントラストを生み出しています。
このようにコストをかけるポイントを絞ることでコストコントロールがしやすくなりますし、意匠的にもコントラストが生まれ、印象的な立面としています。
素材の使い方
安価な仕上げ材として広く知られているビニルクロスに対し、別の素材を使おうと思うとどうしてもコストが上がってしまします。室内の仕上げ材の考え方も屋外と同様、ポイントを絞って最も効果的と思われる場所に、適切な素材を選んで使用しています。まさに適材適所です。
仕上げにより住環境を向上
また、仕上げの使い方によっては、空間の広がりを生み出すことができることも特筆すべき点だと思います。例えばこの住宅では、リビングや洗面所の壁仕上の一部を、それと連続する外壁の仕上げ材と同じ素材で仕上げています。一般的に部屋の広さとして認識されるのは壁やサッシに囲われた範囲のみですが、屋内外の仕上げ材を同一面で連続して使用することで内外の境界をぼかし、空間の広がりを作り出すことができます。日本の住宅事情を踏まえれば、このようなテクニックは住環境を向上させるのに直接的に寄与するので、積極的に採用しています。