土間がつなぐ地域と家族の生活
愛知県の地方市街地における住宅の計画である。対象敷地は、古い神社に隣接する集落に位置し、昔からそこに暮らす人々や大きな木々、細く入り組んだ自然地形の道などに囲まれており、住まい手は豊かな地域社会や環境を好んでこの土地を選択した。その想いを汲み、我々も敷地の周辺環境をダイレクトに感じながら、この場所で暮らす住宅のあり方を考えた。
道路と繋がる内部空間
敷地北部に蛇行しながら伸びている細い生活道路が、あたかも敷地内まで続いているかのように住宅内部に通り土間を計画した。建物の幅の過半を占めるこの土間は、南北にある大開口を貫くように計画することで、まちとの境界を曖昧にし、まちの一部に家具をぱらぱらと並べて暮らすようなシーンが描かれる。
まちに馴染む暮らしのレイアウト
寝室等は床板や内壁を仮設的に設えることで、極力閉じた個室空間をなくし、どこにいてもまちで暮らす感覚を享受できる計画とした。まちとの境界を曖昧にすることは、同時に所有の境界を曖昧にすることであるとも考える。
地域と関わりを持つ住宅の在り方
建設中から住まい手は、積極的に周辺住民との関わりを持っていた。敷地内だけで完結しない物の貸し借り、まちに対して咲く花壇の花々、子育ての相談や高齢者の見守りなど、地域社会との関わり合いを誘発する住宅のあり方が、このまちと住まい手にふさわしいと感じる。