Hut
愛知県の郊外に建つ小屋のような住宅。周辺は畑や竹林などが広がるのどかな場所である。
計画敷地は母屋が2軒建ち、更にそれらに付属する小屋(勉強小屋・農機具小屋)が建っている。数十年前には、家畜小屋も建っていた。2世代~3世代が一つの敷地に複数の建物を所有して生活を行っており、ある種場当たり的に、生活に合わせて建物を更新し続けるような暮らしをしている。
人が集う場所
電気工事を生業とするクライアントからの要望として、書斎やダイニングキッチンなどの居室と共に、資材置き場・職場の同僚とのリフレッシュ空間・災害時などに地域の人が集まれる場所などの要望があった。プライベートな使われ方をする母屋に対して、一回り大きな社会との生活を付加するような計画である。
家族以外の人が気楽に集う事ができて、住宅の家具よりも大きなスケールの収納を備える必要性があった。そこで、居室の横に、予算の許す限り大きな土間空間(サンルーム)をラフでシンプルな素材の組み合わせで作る計画とした。
素材を活かした空間
構造躯体はプレメッキの角パイプ(□-50×50×2.3)を組立柱とし、棚板を柱間に自由に追加できるようにした。ビス打ち可能な(板厚の薄い)材となり、胴縁などの2次部材も無くす事ができる。外装材の下地は、スギの野地板を中間梁にビス打ちし、無塗装で室内に現して使用している。
半屋外で光が行き届く
耐震要素は、ブレースの代わりに、ワイヤーメッシュを使用している。採光用の開口部は、サッシを用いず、このワイヤーメッシュにポリカーボネートを引っ掛けて留めつける事で明り採りとしている。サンルームの出入り口はシャッターとし、開くと一気に室内が半屋外に変化する。サンルームには断熱材を設けない計画とする一方で、入れ子状に計画された居室は、気積をなるべく小さくし、断熱材と空調を計画している。設備によってコントロールされた居室空間を小さくする代わりに、建物をなるべく大きく計画している。
住まいの新しい在り方
住まい手の生活は、1軒の住宅(あるいは機能を定めた1室)の中で完結されるようなものでなく、むしろその周りを充実させることによってより豊かになるのではないかと考えている。この建物自体は住宅未満の小屋のようなものである。しかし、その小屋を介した生活が従来の住宅以上の広がりや豊かさを作り出せればと考えている。