鵜沼の家
鵜沼の家は、自邸です。平面の形は正方形をしています。その正方形を敷地に対して45°傾けています。これは、主要道路から直接覗かれない面が2面取れる事が大きな理由です。またこの傾きによって、アプローチの角度を建物に対して斜めに取る事ができる、角の開いた開放感を得る事ができる、隣家との目線を外す事ができる等、様々な利点が得られました。
建物の構造はコンクリートと木の混構造です。それらの構造材に仕上げを張らず、コンクリートと木をそのまま仕上げ材としています。そうすることで建物が本来持つ力強さを感じる事ができます。
また、素材は経年変化を受け入れられる物を多用しました。コンクリート、無垢材、真鍮、石といった時が経ち味の出てくる物を使用しています。
南に広がる田園風景により成り立つこの建物は、その景色を壊さず、ずっと昔からあったような建物になっていく事を願って設計しました。
玄関
リビングと玄関は一体となっており、光がよく入り、小さい平屋でも開放感を出すよう意識して設計しました。木とコンクリートのコントラストが特徴的で、ケヤキと真鍮板でデザインされた家具が空間をあいまいに区切り、薪ストーブも設置することで空間を演出してます。
リビング
コンクリートと木の空間。コンクリートにはラワン合板型枠を使い、ラワンの表情が映し出されている。リビングの視線は田園風景にぬける。コンクリート打ち放しは木コン(型枠を止めるためのセパレーターの跡)と目地(型枠と型枠の継ぎ目の跡)によってデザインされています。
一般的には1800×900の大きさの型枠を使うのですが、鵜沼の家では横に目地を入れたくなかったので、2400×1200の型枠を使って横の目地が現われないようにしています。
ダイニング
180度パノラマのダイニング。壁面より外に出す事で、軒下空間を楽しめます。
半屋外的な位置に設ける事によって、室内にいながら、屋外でご飯を食べているような気持ちよさを体感できないかと思ったわけです。朝家族が集まる場所がダイニングであり、夜家族が集まる場所がダイニングであるのでダイニングの位置を重要視しました。朝日のいっぱい入るダイニングであり、冬でも日光を浴びると暖かくなります。
キッチン
ケヤキの無垢板で製作したキッチン。料理をしながらも視線は外部へぬけます。照明はなるべく明るすぎないように計画していきますが、唯一明るくしているところがキッチンです。
キッチン照明はキッチンいっぱいに真鍮でカバーを造り、その中に細長い照明を仕込んでいます。
作業している人には直接光は見えませんが、手元はとても明るいです。
屋根裏部屋
構造表しの屋根裏部屋です。トップライトは取り付けられた板で入光を調節することができます。また、トップライトを開けると家中の暑い空気が集まり外へ排出されるので、夏の暑い日でも熱がこもりにくく設計しております。この屋根裏部屋にあえて用途を設けないことで、自由に使える空間としました。
浴室
モルタルとFRP防水のシンプルで素材感のある浴室。洗面所の上に小さな窓があります。
南から入って来た風を北に流すための窓です。建物の対角線に窓があるので、家中の空気が流れます。春から秋にかけて、小さな窓ですが心地よい暮らしに大きく役立ちます。
階段
段板は一枚一枚違った種類の無垢板で造られており、それぞれの板は昇降の際に違った音を奏でます。階段は板で繋げずに一枚一枚独立させることによって素材を際立たせています。照明は存在をあまり目立たせずに壁に埋め込むことによって、階段のみを照らして上品な仕上がりになります。
事務所
自邸に事務所を設け、打ち合わせスペースとしてクライアント様を招くこともあります。壁・天井はコンクリート打ち放し、床はコンクリート金コテです。コンクリート張りの部屋が自身の好みということもあり、好きなようにデザインしました。”断熱材を加えない部屋”という実験的な要素も込めて、こだわって設計しました。
外観
1階はコンクリート打ち放し。2階は杉板押縁張りです。外観はなるべく低く小さくコンパクトに、”小さいは美しい”にこだわって仕上げました。平屋の外観は低くすることによって、日差しをなるべく大きく出して外観のプロポーションを作っております。入口を家族側と事務所側に2か所設けることにより、家族は常にプライベートな空間で日常を過ごすことができます。