カレイドスコープⅦ
数年に渡る敷地探しの末、施主は新旧の邸宅が軒を連ねる閑静な住宅街を選びました。以前より私の手掛けた一連のカレイドスコープシリーズを気に入っておられ、この地域にふさわしい品格とリゾートホテルのような寛ぎに満ちた住まいを求められました。
角地かつ間口の長さを最大限に生かした建物の配置となっていますが、緑豊かなこの地域において外部空間である庭をどのように室内と絡めていくかがポイントになりました。結果として坪庭を含めた5つの庭を配し、それぞれに異なる趣向を凝らしています。
外観
ファサードが単調で長大な印象にならないように塀や門扉といったレイヤーを重ね、建物と一体となるよう高さや配置・厚みなどをデザインしています。本実型枠打ち放しという木目の表れるコンクリートの質感に対してバランスをとれるよう、使用箇所に応じて石材の種類や割付(石の大きさ)、表面の仕上げなどを使い分けています。
エントランス
エントランスホールの正面、彫刻を据えた坪庭。彫刻は模型を携え、施主と共に中国・厦門の石切り場に赴いてフォルムや表面の仕上げを決定したオリジナルデザイン。磨き上げられた黒御影石と野面(のずら)積みの庵治石の壁のコントラストが美しい。
階段まわり
トップライトからの柔らかな光と床面の間接照明によって階段をガラスで支えているかのような軽やかさが強調されています。日中は太陽の光がガラスを通じ、内部に幻想的な光となって差し込み空間を演出します。
リビング
南北両面の庭に抜ける大開口が設けられたリビング。景色を邪魔しないよう細いフレームのサッシを用いているので嵌め殺し窓にみえますが、引き戸になっています。壁で荷重を支える壁式構造でありながら三方向に大きく開いた大空間はリビングだけでも60㎡。ウォールナットで仕上げた天井や壁面家具に間接照明を仕込んでホテルのラウンジのような寛ぎ感を演出しています。
キッチン
アイランド形式でありながら生活感の出やすいシンク附近を隠せるようにデザインしています。ワインセラーや冷蔵庫・オーブンなどの機器は全てトール収納に組込み、筒型のレンジフードでスタイリッシュに。(キッチンメーカーはモーリショップ)
バスルーム
置き型のバスタブと浴室から見える庭の景色から、癒しの要素が詰まった、開放感溢れるリゾートのようなバスルームとなります。
寝室とウォークインクローゼット
寝室と隣接するのはウォークインクローゼット。魅せる収納として、細部まで整えられた空間を目指しました。
外観・夜景
夜になると照明の効果も相まってコンクリートの躯体が浮かび上がります。一段高くなった屋根スラブやフレーム状に見える架構は構造的にも工夫した点なのですが、昼間は植栽によって隠され、目立つことはありません。重厚な素材を用いながらも軽やかさや抜け感がでるよう、架構や開口部をデザインしています。
[Photo : kei Sugino]