SI-house_薄い屋根と水盤と一体になる家
埋蔵文化財の区域に指定されている小高い丘の斜面にある敷地で前方には 南アルプスが広がってます。それは、かつての古代人も眺望を欲していたからなのだろうかと思わせるような美しい山並み。部分的に周囲の住宅で分断されているものの、稜線がとても印象的でした。自然とその稜線にそって、屋根が浮遊していきました。
周囲の木造住宅のスケールを破壊しないよう、出来るだけ控えめな壁。外周には大きな開口は見当たりませんが、十分な光は中庭から。リビングに沿う部分には、水盤。 樹木の緑と共に水面を光がなでます。
飯田の気候は、高低差の関係で局所的に異なる場合もありますが、ここから見る眼下の風景は、その微妙な違いを舞台装置のように顕在化させてくれます。日々刻々と変化するその環境をいかに建築に取り込み、ときに抵抗していくか。
フラットな大屋根は、生活を支える拠り所として重要な任務を与えられていますが、その重責とは裏腹に軽く柔らかい雲のように浮かんでいます。
圧迫感を軽減する低い壁による外観
道路側からは入開口部の少ない抽象化された形態の構成です。表層の抽象化はモダニズムの代表的な手法。要素は出来るだけ少なくなるよう、素材は厳選しています。アプローチはコンクリートとコルテン鋼によるスロープによって、壁の立ち上がりを極力低く抑えた偏平な外観を実現しています。周囲の木造住宅に埋もれるように、コンクリートは控えめに、屋根の薄さと対比するように、構成しています。
エントランスはライムストーンから始まる
コルテン鋼による扉を開けるとライムストーンによる優しい色でリビングまでのアプローチを促します。リビングまでは視線が常に抜けるように、ガラスで仕切られます。空間のボリュームに緩急をつけることで、よりドラマティックなシーケンスとなります。
リビングは家の中心であり建築の中心。
外観とは裏腹にひたすら光を取り込めるように、どこまでも視線が抜けるように。暮らしを支える美しい空間を提供します。ここで使われているキッチンを含めた家具類は全てフルオーダーの特注品、スイッチも既製品を使用せず、オリジナル選定のトグルスイッチを使用。プレートレスでミニマルな納まりにこだわりがつまっています。ダイニングテーブルとローテーブル、TVカウンターと3ピースソファは全て黒皮スチールによるオリジナルデザイン。天然の紋様を持つ不思議な鉄板を天板にチョイス。名作のセブンチェアで安心感を。
中庭に、水と樹木と、安らぎを
リビングにとってもこの建築にとってもこの水庭が重要な役割を担っています。単に視覚的な広がりを与えるだけでなく、外部環境との接続装置としてなくてはならない存在です。一見、ムダなように見える空間こそが彩りと安らぎをもたらします。リビングからも寝室からも見ることができることで、水庭を中心に建築が構成されています。ベッドもオリジナルデザイン。
水周りは全体が水洗いが出来る防水仕様
バスルームと洗面脱衣、洗濯室の機能を一体的に取りまとめることで、水周りのワンルーム化で仕様を統一しています。全ての壁や床は、防水仕様なので、掃除も簡単に。
ゲストルームは小さな茶室のように
ガラスの廊下で接続された小さな部屋は、ゲストルームでもあり瞑想ルームでもあり、他とは違う趣で作られた空間。
夜景も印象的に
出来るだけ光源を見せないように照明配置をすることで、空間の奥行きを感じることが出来ます。無段階調光によって全体的な照度を上げることも、部分的に照度を確保することも可能です。使い方に応じて柔軟に対応できる照明計画を目指しました。