周囲を高層の建物で囲まれた都心部に建つ住宅
この辺りは防火地域になっており、コストを抑えるため構造は木造で、さらに耐火建築物を避けるという点から、2階建て、延べ面積100㎡ 以内(準耐火建築物)という条件のもと設計を行った。敷地の形状に合わせて建物を配置し2分割する。片側は天井高さを抑えた機能的な空間を3層に、残り部分は2層の居室中心の空間とする。それらをつなげることで、居室と非居室が交互に繰り返されるステップフロアの構造ができあがる。
天井が高く開放感のある寝室やLDKから半階という距離で現れる水回りや物干しスペースは大変便利な距離間でありながら、プライバシーも守られている。限られた床面積のなかでゆとりある空間を得るひとつの解決策となっている。
外観は密集した街並みの中でも負けることのない存在感を示しつつ、一度建物に入れば、都心の狭小地という敷地環境を忘れさせてくれる、静かでスタイリッシュな空間が広がっている。都市に建つ住宅としての一つのモデルケースが完成した。
黒いソリッドな外観
都心部の密集した街並みの中で、向かいには公園や小学校があり、視線を受けやすい立地になっている。角地の形状を利用した黒いソリッドな佇まいは、周りの高層の建物にも負けない存在感を示している。
ステップフロアを採用した空間構成
玄関からまっすぐに伸びる階段は、途中に踊り場を設けて、水回りへとつながる。さらに数段のぼるとLDKへと続いていく。水回りを中間階に配置することで、各場所から適切な距離にあり、限られた面積制限のなか、大変優秀な動線計画となっている。
天井の高いLDK
天井高さを4m近くとることで、開放感のあるLDKとなっている。敷地の形状もいかし、ワンルームで開放的かつ散りばめられた大きなスチールサッシュ が独創的な空間を演出する。また、屋上へと続く鉄骨階段もアクセントになっている。
プライベートな屋上空間
周囲が高い建物のため視線が気になるところだが、外壁を高く立ち上げて視線をカットすることで、プライベートな屋上空間ができあがる。物干しスペースだけでなく、バーベキューなどちょっとしたアクティビティの行えるスペースとなっている。
ガラスでつながれた水回り
洗面室と浴室をガラスで間仕切ることにより広がりを感じることができる。湯船につかり、1日の仕事の疲れを癒すリラックス空間となっている。普段は入り口の扉を壁に仕舞い込むことで、階段からの動線の一部となり、人も空気も流れ大変利便性のよい水回りになっている。
個室
建具で仕切られた1階の個室。ワンルームとして広々とした空間としても使うことができる。都心部にあり、アトリエ(仕事部屋)としての使い方も考慮されている。
[Photo : 杉野 圭]