深く精密なスタディを経て、至高の品位を獲得した邸宅。ピクチャーウィンドウを効果的に操り、空間と空間の距離感を曖昧に定義する事で、ここにしか存在しない様相を意図的に作り出している。
建築の中央付近に位置する三層の吹き抜けを中心に光と影が躍動し、建築内の至る所で清々しい時間が流れる。
慎重に吟味された端正なディテールが空気の純度を高め、清らかな空気が内外を循環する。
巨大なピクチャーウィンドウで個性を演出したファサード
建物正面に位置する緑地帯の緑を建物内部に引き込む意図で一枚ガラスのピクチャーウィンドウをデザイン。そのピクチャーウィンドウとほぼ同じサイズの駐車場開口を確保し、シンプルかつ大胆に仕上げたファサード。東側(右写真の左側)は、開口部のない壁だけのデザインとした、いわゆるコートハウスの形式。2層の白い箱の上部に飛び出た白い箱は、建築のほぼ中央に位置し、南側に大開口を設ける事で内部空間に光を導き、コートハウスながら光の躍動する内部空間を実現。
2つの吹き抜けが縦に重なりながらズレる事で光が躍動するLDK
ずれながら重なる2つの吹抜(2層吹抜と2.5層吹抜)のそれぞれにハイサイドライトをデザインする事で、コートハウスの形式を取りながら、光が躍動する内部空間を実現。リビングに隣接する中庭は、ピクチャーウィンドウで内部外部を仕切る事で空間の定義を曖昧にし、余白という豊かさを獲得。約10mのカウンター収納は、収納能力だけにとどまらず、換気窓や給気口などの諸設備も完備し、シンプルなインテリアデザインを極めるための重要なファクターになっている。
ミニマムホワイトキューブキッチン
建築のインテリアデザインと呼応するオリジナルのミニマムホワイトキューブキッチン。ミニマムを追求するため、各部材の厚みに着目し、建材としての必要強度を保ちながら可能な限り先端を薄く特殊加工する事でミニマムを実現。モルタル調の大判タイルの草原の中でキッチンが浮遊しているような意匠を目指し、床から50mm浮かせる事で実現。加熱機器は、IHとガスが両方使用可能なハイブリッド型を採用し、実生活の多様性に配慮。
外部に閉じ内部に開いたプライベートガーデン
白い壁で囲われた内部ような外部のような空間の定義が曖昧なプライベートガーデン。2つのピクチャーウィンドウは、リビングとサニタリーを絵画に転換して、プライベートガーデンに引き込む。上部を見上げると、青空が白い壁で切り取られ絵画として存在し、雲の流れで時の流れを感じる。プライベートガーデンは隣接する各内部空間に必要な光量を導く役割も果たす。
光と透明感の溢れるサニタリー
床壁天井全てが白で統一された透明感あふれるサニタリーとバスルーム。床彫り込みのバスタブや強化ガラスの仕切りで開放感を演出。洗面上部の鏡は、収納の扉に鏡を貼り内部収納を完備。壁に彫り込む事で凹凸を無くし、バスルーム内の鏡と意図的に連続させる事で開放感を獲得。プライベートガーデン側のピクチャーウィンドウは夜間になると鏡の役割を果たし、反射を利用して個人住宅とは思えないような空気感を作り出す。
光と影を演出し敷地内に散在する8つの光庭
敷地内の至るところにそれぞれの個性や役割を保有する8つの光庭をデザイン。各空間に必要な光や風を隣接する各光庭から内部空間に導くよう配慮。内部か外部か、空間の定義が曖昧な豊かさの溢れる空間が敷地内に散在している。空間から空間へ移動する度に新しい風景が出現し、白い大きなキャンパス(壁)に光と影が躍動し、澄み切った空気が循環する。