崖荘
和歌山県の南端部、太平洋にせり出した崖地に位置する国立公園内の住宅である。敷地からは朝日と夕日の両方を望むことができ、夜には満点の星空が広がる。遠く地平線には大型船が静かに行き交い、運の良い日には近くをウミガメが穏やかに泳ぐが、荒天の際には容赦無く風雨に晒される。この場所に備わる大自然の豊かさと厳しさを享受しながら、数千万年前の地層からなる巨大な岩盤と呼応する建ち方を模索した。
佇まい
躯体は耐久性を備えたRC造とし、斜面との関係性をはかって4本の柱からなるラーメン構造とした。型枠は敢えて裏面を使用して木目を転写し、鱗のようにバラつきを与えることで量塊の中に有機的な繊細さを合わせ持たせている。
景色を存分に享受する
各階ともに海に向かって窓を穿ち、外部には露天風呂とバルコニーを設けてダイレクトに海に開いた。海の風や波の音を感じ、開放感あふれる海景色を楽しむことができる。
岩盤と呼応し、風景となる
建設時に露わになった岩盤が再び樹木で覆われ、屋根が黒く色褪せる頃、目指した風景がようやく立ち上がる。