通り土間と明暗のリズムがある日本家屋のリノベーション
兵庫県篠山市、山間の田園風景が広がる自然豊かな地にある、農家だったという伝統的な日本家屋をリノベーション。都心から移住した親子3人が暮らしている。どっしりとした建物の外観はほぼもとのまま。趣きがあるとは言いがたいコンクリートブロック塀は解体した。そのほか、必要最低限なもの以外は撤去し、周囲のおおらかな自然との調和をはかりながら造園を計画している。
通り土間が出迎える
内部ではすべてを改修するのではなく、既存の延床面積の半分程度、77平方メートルに手を入れた。玄関を入ると印象的な通り土間が出迎える。この通り土間を中心に、そこを行き来しながら暮らせるようにしている。間取りは家族の距離感や過ごし方を大切にし、それぞれ用途の違う部屋のつながりがスムーズになるよう工夫した。土間と、和室の上階にある収納庫だった部屋は吹き抜けにして開放感を出している。
新と旧を織り混ぜ、味わいを感じる
年を経て生まれた独特の味わいを保つため、畳や木製の建具などはほぼそのまま残した。窓の位置など、光や風の取り入れ方は変えずに明暗のリズムがある往年の雰囲気を再現している。
柔らかく、リズミカルに展開される空間
天井と壁には、この地域で採取した土を混ぜた「灰中(はいなか)」という独特の砂漆喰を使った。調湿作用があり、モノクロームだが暖かみのある柔らかい印象を与える。床はリビングとダイニングで段差をつけ、それぞれ異なるフローリング材を張って空間にリズムをつけた。改修した部分には環境に優しい素材を使った、極寒地域向けの断熱材を採用している。
新旧を調和させるリノベーション
新旧が出会う部分は雑味が出ないよう、それぞれの空間がすっきりと調和して、全体として違和感がないよう配慮した。造園計画など、周辺環境とのつながりも意識している。建物を通じて日本の新旧の時間軸を感じることができる。家族はもちろんゲストもおおらかに迎え入れてくれる住居となるよう、願いをこめた。