薪ストーブのある入母屋の家
閑静な住宅街は昭和37年頃に開発された地域で、建物もその頃新築された。南にある庭はよく手入れされ、住まい手の愛着が伝わってくる。各部屋は、建物中央に伸びる廊下の南北に配置されており、南側の部屋で玄関に最も近いのが応接間だった。この年代の家なら、最も環境の良い位置にあることが殆どだ。応接間の西に並ぶ和室も、同じく南面しており条件がよい。和室の北に繋がるダイニングにはトップライトがあった。当時としてはかなり思い切った試みだったと思う。
祖母、両親、そして本人が暮らした、築58年の日本家屋を撤去して建て直すという選択と、フルリノベーションという選択があった。結果として、フルリノベーションとなった理由は色々あるが、「愛着」が一番大きかったと思う。
リノベーション前
南の庭に開く
形状はそのままに、まずエントランス位置を反転させた。主だった部屋は全て南の庭に開き、建物の中央部にもトップライトから光が落ちてくる。
開放感のあるLDKに
30畳程あるLDKの天井は高く開放的だ。床、造作家具はナラ材で仕上げた。壁も珪藻土の塗り壁とし、自然素材にこだわっている。キッチンの後ろに水回りを集中させ、家事動線が大変コンパクトになっている。リビングの一角には薪ストーブがある。高性能な機種で、炎がゆらぐ風景と共に暖房器具としての期待も高い。
収納も豊富に
洗面に隣接するファミリークローゼットは、メジャーリーグのロッカーをイメージしたもの。キッチン横にパントリーも備え、収納はたっぷりと確保した。
四代に渡って住み継ぎたいと思える家に
既存ストックの活用が叫ばれるが、現実的にはそこまで加速している感はない。理由は非常に簡単。既存建物を撤去し、新築するほうがビジネスとしてリスクが少ないからだ。そこは物創りに一生を捧げた創り手としての意地を見せたいと思う。人と物を愛することが、物創りの原点のはずだから……
四代に渡って住み継ぎたいと思える家へ。そのミッションは果たせたのではないかと思っている。