∠六甲

安藤忠雄による「六甲の集合住宅III」の一室リノベーションである。
神戸市東部に位置する六甲の街は神戸港から六甲山まで南北に広がり、古くから外国人向けの居留地が開発されて今も成熟した住宅地として発展している。とりわけ六甲山の麓にあたるこの場所は、南下りの斜面と用途地域の境界線が海までの眺望を可能とし、晴れた日には遠くに大阪湾までを望む。
六甲山に呼応する




リビングの天井は、六甲の斜面と呼応するように角度を持った掛込天井とすることで、意識を風景に向けるのと同時に柔らかい光を奥へと導く。
3本が平行に並ぶキッチンカウンターとソファーベンチも眺望への矢印の役割を果たす。
古きを残す

戸境のコンクリート壁はジャンカや地墨も残り外壁のそれとは大きく表情が異なるが、当時の手仕事による質感と痕跡を認め、この住宅の象徴としてそのまま現しとした。
変わらない風景




コロナ禍を映してワークスペースを2箇所必要としたが、使い勝手だけでなく周囲との関係性を慎重にはかった。
竣工から40年を迎える一連の六甲の集合住宅は、今も変わることなく神戸の風景を見つめ続けている。