ヤマノイエ
箱根の豊かな森に建つ、2棟から成り立つ週末住宅である。敷地は傾斜地に広がる美しい落葉樹林であったが、注意深く調査すると、斜面中央を突っ切って流れる水の道と沿うように生えた大樹帯があり、土地が持つ流れが見えてきた。そこで大樹帯を中庭に見立て、中でもひときわ美しい大欅を中心に緩やかに囲い込みつつ、流れを阻害しないように水上と水下は開放された配置とした。
森の中に建ち、自然と共存する
環境改変を最小限とするため、構造、施工計画では、樹木や地形に影響が少ない方法を都度検討し、修景に使った薪、枝、岩、草、は、着工前に工事範囲から予め採取保管したものを再配置している。
外周側ファサードは、国立公園規定に対応して「石」の表現としてのカラーコンクリートはつり仕上にしている。
軸組露しの天井を持つ、コの字型の大空間
斜面上部に建つL棟は、緩やかなコの字型の一室空間で、中庭の樹木や微地形に沿って2.5mの高低差を取り込んだ作りとした。リビングはワンルームでありながら、見通せない奥行きと細やかな場所性を持つ。
プールテラス
L棟では一番高い位置に中庭を見下ろすことができるプールテラスを配置。自然の中で優雅なひと時を楽しむことができる。
L棟とB棟を繋ぐ渡り廊下
L棟とB棟の架け橋となる渡り廊下から2つの棟を行き来することができる。森の中で浮く空間体験を楽しむことができる。
プライベートルームを配したB棟
一方、斜面下部の機能諸室が入ったB棟は、斜面に対して同じ高さでまっすぐ建てることで、場所毎に異なる斜面との関係が部屋の特色となるような作りとなっており、斜面の持つ魅力を最大限楽しめる場所づくりを徹底した。
多様な暮らし方に応える建築
この建築は、個人で幅広く活動している施主が、公私の垣根なく利用できるよう、多様な活動が想定されている。森を巡りながら居場所を探り当てるような応答を積み重ねることで、さまざまなシーンに対応可能な、大らかさと細やかな場所性が共存する空間が実現した。