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「サーカディアンリズムって?」 生活リズムに合わせた、理想的な照明環境を作る

0LDKの遅澤です。最近家を引っ越しした際に、照明器具も一新しよう!と思いたち家電量販店とインテリアショップに足を運んで自分好みの照明を購入。部屋にマッチするデザインの照明器具が見つかったので、ワクワクしながら家に配置してみたところ、思ったより部屋が暗すぎる……古くからの知り合いであり照明士の尾野上くんに相談をしてみたところ、どうやら全く見当外れなセッティングをしていた模様。以前の家でも、デザインが気に入っていたペンダントライトを使用していたのですが、今回のような部屋の暗さを感じた覚えがありました。話を聞けば「人間の本来のリズムに合わせた光の強さ・高さ・色」を意識して照明を作る事が重要なのだそう。新しい発見ができたと同時に、「いい照明の選び方ってなんだろう?」と気になったので、照明士の尾野上くんにお話を伺ってみました。

尾野上 裕輔

照明器具メーカーにて住宅・店舗・施設の照明設計に従事。在職中に照明士、第二種電気工事士を取得。現在は、電気設備工事会社にて店舗の電気設備設計に従事。

そもそも照明とは?

遅澤 : 尾野上くん、今日は部屋に設置する照明のことで話を聞かせてください。よろしくお願いします。この間教えてもらった話が、目からウロコ過ぎて気になりました。まず、部屋と言ってもリビングや寝室、広さなどは千差万別ですが、それぞれの部屋にどのような器具を用意すると良いのか、そしてどう配置するのがベストですか?

尾野上 : 参考になったようで嬉しいです。こちらこそよろしくおねがいします。遅澤さんのおっしゃるとおりで、部屋のインテリアやサイズなどの空間、そしてそこに住む人の生活スタイルにもよって選ぶ照明器具は変わります。好みや部屋の形など、一概に答えを出すのは難しいですが、まずは「照明が持つ意味」から説明します。照明は基本的に太陽の光に代わるものなので「サーカディアンリズム」が根底にある、という考え方を持つ必要があります。照明士はもちろん、インテリアコーディネーターや空間設計に関わる仕事をしている方々はそれを念頭に置いた照明設計をしていると思います。

遅澤 : サーカディアンリズム?一般的には聞き慣れないワードですが、どういうものですか?

尾野上 : サーカディアンリズムというのは人間の生体リズムのことです。陽が昇ることで目覚め、日中は活動する。そして陽が沈んで、夕飯を食べて寝る。人間の生体リズムは太陽の光と密接な関わりがあり、これを維持して生活することが大切だと言われています。太陽光の色合いって、陽が昇るときと沈む時で異なっていますよね?人間はそれに準じて生活をしているわけです。

遅澤 : うんうん。言われてみればたしかに。光の受け方は一日を通じて一定のリズムがありますね。

尾野上 : そう。だから照明も、基本的にはサーカディアンリズムに則って設計することが大切です。太陽光の強さ・色・位置が時間帯によって変わる様を、居住空間でもできるだけ再現することを意識します。
例えば、昼間は頭上から照らせるシーリングライトで白い光を当て、夜は中段から床にかけて暖かい色合いで構成する。特に室内の照明は、1日の太陽の動きという観点から設計することが理想ですね。

遅澤 :わかりやすい!時間帯での変化は、今まで一度も意識した事がなかったですね。最近の照明器具には調光機能がついているものも多いですよね。シーリングライトも、リモコンで明るさと色を変えられる高機能な製品をよく見かけます。

尾野上 :あれはまさに時間帯や用途に応じた理想の光量と光色を実現することができるので、オススメですよ。

遅澤 :なるほど。話をしていると私もまた欲しくなってきました(笑)。尾野上くんが特にサーカディアンリズムを気にして設計する部屋はどんな部屋ですか?

尾野上 : 特に意識しているのは寝室ですね。眠りへの入りやすさと居心地が大きく変わるんです。人間は大昔、焚火やろうそくで夜を生きてきた時代がありました。太陽が昇ると同時に行動し、太陽が沈むとともに一日を終える。この時代はサーカディアンリズムに則った、理想的な生活リズムで生きていた時代です。生活様式はだいぶ変わってしまいましたが、現代でそれを再現するには、床から低いポジションでロウソクの炎に近い色合いの光を設置すること。そのほか枕もとに読書灯を置いたりすることも効果的ですね。

遅澤 : ホテルのベッド近くの照明はまさにそう設置されていますよね。サーカディアンリズムがしっかり取り入れられている。ゲストをもてなすために作られているから、快適に眠れるよう配慮されているのですね。リラックスして眠りにつけるというか。

尾野上 : そうですね。日中は太陽光を取り入れながら、活動しやすい明るさをキープする。くつろぐ時や寝る前はフロアライトを用いて少し照らす程度で、睡眠に入りやすくするための照明環境が作れると良いですね。この観点で照明器具を住宅に取り入れることができればベストです。

遅澤 : 太陽の動きに合わせた照明の取り入れ方が大切ということですね。今まで全く気にしたことなかったな……デザイン優先で気に入ったシーリングライトを買って設置していただけでした。ペンダントライトもルイスポールセンのPH5を購入したのですが、これ一つだけだとけっこう暗くて困っています。

尾野上 : PH5は素晴らしい名作ですが、部屋全体を明るくするための照明器具ではないですからね。それは確かに暗いと思います(笑)PH5は間接的な光が美しいライトなので、テーブルをほのかに照らしたり、部屋のアクセントとしての使い方がベストだと思います。本当に美しいデザインなので、鑑賞するだけでも楽しいですよね。

遅澤 : 昔から憧れていたから買ったのですが、使い方を間違えると性能が発揮できない悪い例ですね。もしよかったら次回ぜひ私のリビング照明を手直ししてもらえないでしょうか?それを0LDKで記事にして紹介させてほしいです!

尾野上 : もちろん、いいですよ。

遅澤 : ありがとうございます。では最後の質問になりますが、小野上くんの考えるリビングにおける照明の配置リストを教えてください!

尾野上 : 部屋のサイズ、レイアウトによっても異なりますが、一般的な間取りやレイアウトだと下図のような設計が理想です。もちろん住む人の好みや生活スタイルにもよって変わるので、一概にこれが正解だと言えない部分はあります。ただ基本的には、お話したサーカディアンリズムに則った設計ができていれば間違いはないと思います。

遅澤 : 本日はありがとうございました。また次回もよろしくおねがいします。

尾野上 : こちらこそ。いつでもまた呼んでください。

リビングの明かり

リビングは家族とのコミュニケーションをとったり、読書や映画を観てくつろぐ空間です。そこで、照明のポイントは調光・調色のできる照明器具を使用すること。太陽光を採光できる場合は消灯し、明るさが足りない場合は昼光色から昼白色で、太陽光と似た光で補います。
夜間はリラックスできる空間にするため、柔らかな光を放つ照明器具を採用します。
具体的には、

A : ダウンライトで棚や壁面を照らし、小物を演出しながらも明るさを保ちます。また、コーヒーテーブルの真上にはダウンライトを設置し、テーブルの明るさを確保します。
B : フロアスタンドライトで読書をする明かりを採用。
C : 間接照明で奥の壁を照らし、空間の奥行きを出します。また、テレビの背面を明るくすることで目の負担軽減へと繋がります。

これらの照明器具をシーン別に調光することで、一層くつろげる空間が生み出されます。家族との団欒では全体的に明るくし、映画観賞では全体を減光することで映画館のような雰囲気を作ります。リビングの照明器具を多灯にし、調光・調色できる照明環境にすることで空間を楽しみながら作ることが可能な照明計画にしてみました。

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