川の音を感じながら家具が映える平屋
設計のはじまりは、家具好きでご自身でも家具のコレクションがある施主の「家具が映え、時と共にうつりかわる空間に住みたい」というお話からだった。敷地は大阪府河内長野市の中部に位置し、紀泉の山から流れる天見川に接する大通りから少し離れた閑静な住宅地に立地する。
この計画で行ったことは、家具が映える空間にすることはもちろん、そんな敷地と川の関係に対して、単純に川に対してオープンな空間をつくることではなく、川の感じ方を捉え直すような工夫であった。
川の豊かさを取り入れる
全体構成は、ファサードは道路からのプライバシーに配慮し閉じたかたちとし、室内では自然に川方向に意識が向かうようなレイアウトとした。また「休日ギャラリーとして、自分の家具を色々な人に見てもらいたい」との施主からの要望から、ギャラリーとしても演出できるよう川と平行に水平方向に伸びるプロポーションを意識した。
動線
エントランスを入ると、家具を配するリビング、ダイニング、そこから続くウッドデッキテラスと庭があり、さらに奥にキッチンや収納などをまとめたユーティリティースペース、寝室を設けた。
家具を主役としたリビング空間
生活で必要なものはユーティリティースペースに納められているため、リビングはシンプルで無駄がない、家具が主役の空間である。また全体的に勾配天井が川方向に向かって高くなることにより川と空、庭に対して広がりをもつ空間を演出している。
ウッドデッキ
川に接する半外部空間のウッドデッキは、一般的なイメージより少し高く(地盤面から約1mの高さに)設定したことによりそこが仮想の地面に見え、リビングは半地下のような安定感がある落ち着きが生まれる。そこからは川を直接見るのではなく、庭の植栽や空に向かって視線が流れ山の稜線を見ながら、川からの風や川の流れる音が聞こえその存在を感じることができる。
高さを持たせたウッドデッキから川を感じる
ウッドデッキテラスとしては少し高さがある為、川べりではなくても川の水面が見え、その存在を感じながら家族や友人が集う場所となり、川の舞台であり人の舞台となる。またウッドデッキの下部をストレージ空間として、施主がお持ちの家具のコレクションが収納できるようになっているため、時々の気分に合わせて家具をリビングで使うことができる。
屋根の構造
構造についてはウッドデッキに架かる屋根は、主に垂木と間柱で構成することにより、木造だが柱のない大スパンとする計画とし、リビングからの風景をすっきりと切り取った。
自然や季節の変化に敏感になれる、ミニマルな住まい
建物全体にミニマルなイメージやライン等のバランスを整え、シンプルながらも一つ一つ丁寧に作り込んだ。そこには〝その時々の気分の家具〟が季節や時間によってうつりかわる柔らかく穏やかな光と、静かに聞こえる川の音に包み込まれるような空間がひろがっている。
暮らしの中にゆるやかに川の気配を取り入れることで、日々のささやかな変化を感じながら、お気に入りの家具と共に豊かな生活が育まれていくことを願う。
[Photo : 下村康典]