大屋根の家
長さ40mの大屋根の下に家族が集う350平米を超える住宅です。クライアント夫婦の息子たちは既に成人し独立して暮らしており、週末だけ帰ってくるということだったので、大屋根の下に個室やキッチン、水回りなどを独立したボックスとして挿入することで個室間のプライバシーを保てるようにし、それぞれの個室の間に生まれる空間を動線のほかにリビングダイニングや書斎などといったパブリックスペースとして設けています。パブリックスペースの壁の仕上げは屋外の仕上げと一緒にし、内外同じような設えとすることで半屋外のような開放的な空間としています。その中にリビングダイニングや個室だけでは無い中間的な居場所を点在させることで、大人同士の適切な距離感を保ちながら過ごせる空間を目指しました。
一つの大屋根に覆われた家のカタチ
建物は白い大屋根が特徴的な母屋とグレーの壁に覆われた、車3台が収納できる駐車場棟から構成されています。外壁には素材感のある下見張りの木板壁や塗り壁を使いつつ、連続する木の基壇により水平性を強調しています。建物レベルは道路よりすこし高くし、石垣の壁で目隠しを作ることで塀を立てることなく緩やかに外部と仕切っています。
庭に対して全面開口のリビングダイニング
庭に面したリビングダイニングは家族の個室の間に位置しています。リビングダイニング上は吹き抜けとすることで開放的な空間としつつ、適所に壁を設けることで直射日光や外部からの視線をシャットアウトしています。室内の仕上げは広く連続した空間であることを考慮して、外壁と同じ下見張りの木板壁や塗り壁材を連続的に使うことで外と内の境界をあいまいにしつつ空間全体のアクセントとしています。ダイニングの家具、ソファ、照明器具などはこの住宅のために設計されています。
ゆったりとした階段・廊下スペース
家族には大型犬がいるため、階段は犬も登れる緩めの階段となっています。階段脇のスペースには外を眺めながら作業のできる書斎を配置。個室の前の通路は少し広く取り、ソファなどを置くことで部屋にこもらずとも過ごせる空間を設けています。
空間を繋ぐ吹き抜けスペース
天井は大屋根の形をそのまま写し取った形状としています。屋根形状はちょうど家族が集まるリビングダイニングが頂点となっており、ここが家の中心となる様に意図しています。天井には照明を含めた一切の器具を取り付けず、ミニマルな構成としています。吹き抜けにはインドネシア、バリ島の職人にオーダーした籐編みの手すりを設けることで空間全体の素材感と密度感を演出しています。四方にある窓からは室内に心地よい通風が取れる様に計画しています。
開放的なデッキテラス
大屋根の端部に位置する開放的なデッキテラス。リビングスペースに面した家族の庭と対照的に、一つの部屋の様にゆったりできる場所となることを想定しています。
[Photo : 矢野紀行写真事務所]