蘇芳の器
この住宅は、牧草地と公園に隣接した伸びやかな敷地に計画された。
「一面に広がる緑の大地には,どのような建築の佇まいが相応しいのか。」「北国らしい小屋やサイロのような,何か愛らしくも力強い建築はできないか。」これらの問いの先に、北海道民の記憶に刷り込まれた板金の赤色を箱型の家に纏わせ、その中に3層の床を挿入する構成を試みることとした。
3層の構成
1層平面は玄関先を「くの字」に凹ませて人を招き入れるアプローチとし、内部は大小2つの「間」からなり、大きい方は外から連続した自由度の高い空間としている。2層目は階段を中心に、隔たりなく、様々なスペースがぐるりと配されている。
L、D、K、子供スペース、浴室、洗面、書斎、WC、L、D、K・・・この回廊の頭上に,3層目の大きなロフト空間が広がっている.
雄大な借景を取り込む
高天井の中に,大きなテーブルのような構造物が少しだけ斜めに振られて置かれている。狭い、広い、低い、高いという空間が生まれることによって、階段を取巻く居場所がそれぞれに性質づけられてゆく。
この床の板は好きな場所を抜くができ、頭上の抜け感を任意に調整することができる。また窓は天井から腰高までの大きな開口とし、立つと牧草地越しに水平線が見え、ソファーに座ると雄大な空のみが切り取られる。
北国に佇む「蘇芳の器」
公園の借景には桜や藤の花を楽しみ、四季の変化や一日の移ろいさえも美しく感じられる「蘇芳の器」の中で、この家族らしい生活が営まれている。