方形屋根の住まい
4人家族のための住まい。建物を配置する場所は道路に面しておらず、奥まった敷地条件ということもあり、街並みの連続性をさほど意識せず、しかしながら日本的な居住まいを現代に表現しようと試みた。寡黙で雄弁、屋敷奥にある蔵のような強く安心感のある四角いプラン。大きく窓をとりつつ断熱性、耐震性も考慮した厚い壁。長く伸ばした庇で、量感のある厚塗りの珪藻土壁を風雨から守った。
内と外をつなげる大開口
気候の良い日はダイニングの大開口を開け放つ。床と庭の高さが近くなるように計画し、連続性のある空間で四季を楽しめる。西側から入ってくる自然光はダイニングの吹き抜けの土壁に柔らかく当たり、空間全体へと広がる。
新しい空間と古い家具
食器棚やキッチンカウンターなどは古い家具を設え、新しい空間と古い家具とのマッチングを意識した。いくつかは設計に入る段階でチョイスし、古い家具ありきの構成になった。建築→家具ではなく、家具→建築という順序も良いのではないかと考えている。
親密度
2階は家族室と称して就寝前に家族がリラックスした時間を過ごすためのプライベートな空間を設け、クローゼットなども兼ねる使い勝手の良い場所となった。必要以上に壁を建てず、空間のつながりを大切にしたおおらかでフレキシブルな空間構成を狙った。小上がりでの床座、天井高を抑えた空間は親密度が上がる。吹き抜けからも1階の空気感が程よく伝わってくる。
素材
敷地内の石垣には近隣の川で採れた角の丸くなった多種混在の石を使い、内部扉には美濃で職人が一枚づつ漉く和紙を張った。内部壁には天然の土を塗った。華美な装飾を避け、先祖から受け継いだ美のエッセンスを随所に利用しながら自然の素材にも力を借りて、古代より変わらぬ人間の暮らしと美へのアプローチを大切に考えた。
身の安全と心の安らぎ
コンクリートの 1 階床は温水床暖房を流すことで冷えから解放され、その強度は生活の上で気楽な付き合いの出来る信頼の床となった。なおかつ高い断熱性能により、冬は床暖房のみ、夏は 2 階に設置された小さなエアコン 1 台で家全体を冷やす。断熱、空調計画により部屋ごとの温度差は最小化され、浴室下にも埋められた床暖房配管により浴室も常に快適。