立体的に絡み合うテラスを設けた都市型の5層住居

名古屋市大須の商業地域に建つ5階建の住宅。大須は高層のオフィスや集合住宅と古くからの商店街や低層の住宅など下町的な雰囲気が混在し、また寺社仏閣と多様な新しいカルチャーが入り混じるエリアでもある。40坪と限られた敷地の中で、最大限の床面積と周辺からのプライバシーを保つことを求められた。
最大限の内部空間を確保し、各階の室内の面積を効率化するため、都市部特有の雑居ビルなどに見られる階段室兼エレベーターホールのプロトタイプ的な平面構成を踏襲した。
本棚とエレベーターのある階段室




5層吹き抜けの階段室は広めにとり、トップライトや開口を大きく開ける事で、開放的な階段室とした。階段周りに4層分の本棚を設ける事で、階段室自体も居場所とし、アートやプロダクトを収集する住まい手の雰囲気が階段室越しに街に染み出す計画とした。階段室と、室の間は各所で開口を設け、階段室越しに光や街の風景が入り込む。
各層はテラスと繋がり光を美しく取り込む




各階の南北にテラスとなる外部空間を設け、各階のテラスが立体的に繋がる構成とした。外周部の開口と室内の開口部の階がズレる事で、周辺からのプライバシーを守りながら、光や風を通し、室内に彫りの深い陰影をもたらしている。
キッチンを中心とした4階のLDK




建主は料理好きでキッチンで過ごす時間が多く、重要視されていた。キッチンをコの字型に配置し、カウンター面を大きく使えるようにすることで、快適に料理ができ、機能性と居心地の良さを兼ね備えた場所となった。建主は客人を招くことが多く、来客を想定した空間作りを心がけた。リビングでは、光の取り入れ方にもこだわり、開放感のある光の取り入れ方を意識した。
造作で彩った寝室




寝室ではベッド、サイドテーブル、テレビボードなどをカスタムで作り出した。この空間の中心にあるベッドは建主が元々所有していた既存のベッドで、それを設置できるように造作でベッドフレームを設けた。寝室はミニマルな空間に仕上げ、多くの収納が可能なようにウォークインクローゼットも設置している。
開放感溢れるバスルーム空間




バスは3階と5階に位置している(写真は3階のバスルーム)。ガラスで囲いテラスと連続させることで、開放感の大きい半屋外のような浴室が完成する。南側に浴室を位置させることで、日中は日当たりが良く、光を最大限取り込める設計となっている。
ルーフテラス



5階のバスルームからルーフテラスへ繋がっている。2畳ほどの比較的広々とした場所でルーフテラスにはベンチ、キッチンを設置し、客人を招いてパーティーなども出来たりもする。夜間は景色にも恵まれ、夜景となった大須の街並みを一望できる。
ガレージ

1階は車3台分ほど停めることができるガレージを設けた。車以外にも、建主がアウトドアが趣味であり趣味に使う道具など置けるスペースや、駐輪スペースも確保している。
プライバシーが守られたミニマルな外観




外壁は5層全体をラーチ合板の打放しとし、ミニマルな表現としながら、無機質になりすぎない、木目やムラのある表情とした。
穏やかな陰影と共に、少し雑多な大須特有の都市風景が入り込む、都市に住む楽しさが感じられる住宅となった。
平面図


