二枚屋根の家
2枚の屋根で木造3階建ての住宅を計画した。本件は大阪の箕面に住む夫婦のための住宅である。夫婦共にそれぞれの友人との関係を大切にしており、ゲストを自宅に誘い食事をすることも日常的だった。
本件における3階建ての機能的な母屋と、おおらかな平屋の庇は1200年をかけて日本建築が醸成してきた外部(客体)との関係性を滑らかに繋いでくれる空間装置と言える。
ホテルのような空間構成
夫婦にとって自宅のリビングルームは友人と交流を深める社交場としての意味合いが強く、常に外に開かれた場所として位置付けられていた。個室は寝室に加えて両親や友人が泊まることを想定したゲストルームを希望され、開かれたラウンジをもつコンパクトホテルのような構成を想像することができた。二人にとっての公私の境界線がエントランスや外壁ではなく、まさにホテルのように各自の個室に近い位置にあるように感じられた。
三角形状の内部
住宅内部に存在する公私の境界線によって区分された2つのエリアを2枚の屋根「母屋と庇」によって構成し、リビングルームを庇下のような開放的で風通しの良い場所にしたいと考えた。長大なスパンを少ない最低限の垂木で支持することで、大空間を実現しつつもコストと工期を抑えている。また三角形上の平面形状に合わせて垂木の間隔を徐々に広げることで、グラデ―ショナルで伸びやかな広がりを生み出している。
街並みとも調和する二枚屋根
屋根材は断熱材をOSBパネルでサンドイッチしたダブルシールドパネルを採用した。外壁は露出可能な黒の透湿防水シートを高温熱処理木材の羽目板と組み合わせることで材料費を抑えつつ、耐久性を高めた。羽目板同士に間隔を設けることで、木外壁の面を分解し、街に対するボリュームの圧迫感を軽減しつつ、外壁という境界が曖昧になることで庇内外が溶け合う環境をつくり出した。また三階建ての圧迫感を、低く抑えた軒先と二枚の屋根によって軽減し、周辺の街並みとの調和を生み出している。
自然豊かな箕面山への景観を楽しみながら、二人がこれからも楽しく快適で、私を含めた多くの友人たちをいつでも迎えてくれる開かれた生活を送ってくれることを願っている。