大きな中庭のある家
旧中山街道の風情がのこる街区に建つシニア世代の終いの住まいです。敷地の中で一番環境良い南西側にコート(庭)を設け、建築と格子状の塀で囲いコートに対して大きく開いた計画です。一日中、太陽の日射しを感じることができ、窓を開ければ自然に風が流れていきます。
自然の恵を取り入れながら暮らしてきた、日本の伝統的な住まい方を現在に継承し、庭と室内が融合し響き合うコートハウスを目指しました。
外観
木製デッキを敷いた中庭では、テーブルを出してシンボルツリーの木漏れ日の下で風を感じながら食事を楽しみます。中庭の隣地側は、風を通しながらプライバシーは守る再生木材(人工木材)の横格子で囲っています。黒い外壁はガルバリウム鋼板のサイディング、白い外壁は窯業系サイディングです。
ガレージと玄関
屋根のかかった駐車スペースと玄関ポーチ。正面の木製ルーバーの奥に中庭(コート)が広がる。スチールの玄関扉は、建て主のお気に入りのサッカーチームのカラーのレッド。玄関を入ると正面の窓からコートの緑が見え、左側には郵便受け、傘と下足、コート、防災グッズなどの壁面収納。玄関手前にはサービスヤードの格子扉があり、キッチンの勝手口までポリカーボネートの屋根が掛かり、奥にエネファームが設置されています。
中庭と一体になるリビング
リビング側は天井が高く、高窓を通して光が奥深くまで入り、大きなサッシを開けるとコート(中庭)と一体的な空間になります。壁は珪藻土左官仕上、床はナラの三層無垢フローリングで温水式床暖房入り。高い天井の仕上げは、ナラ化粧合板(突き板合板)の柾目。キッチンはアイランド型で、一番奥まったところに縁無し畳を敷いた和室があります。
コート(中庭)
深い庇が強い陽射しや雨を防ぐ縁側のような空間が、内外の中間領域となりコート(中庭)と室内を繋いでいます。木製のデッキ材は足触りが柔らかいベルダデッキ。中庭には、秋の紅葉が美しい落葉樹と、冬にも緑が楽しめる常緑樹を、室内からの見え方、西日除けの役目などのバランスを見ながら配置。中庭の一部には、低木や草花のほか料理に使うハーブ類も植えています。
司令塔の位置にあるアイランドキッチン
アイランドキッチンは、シンクと作業台の手元を腰壁で隠しています。背面側にはガスコンロを備えたカウンター収納を設け、食器収納は壁面に埋め込んだ出っ張りのない納まり。シンク前に立つと、LDK全体が見渡せ、庭の緑や空を見ながら調理できます。キッチン腰壁の面材は天井と同じナラ突き板柾目です。
洗面・脱衣・浴室・トイレ一体の水廻りスペース
水廻りスペースはキッチンの隣に配置。家事がコンパクトな動線で効率的に行えるようになっています。洗面室の奥には引込み戸で入るトイレがあり、通路をゆったり設けているので、将来車椅子利用になった時も安心です。背面には洗濯機を置いた脱衣室と、坪庭の緑の見える浴室があります。洗面室の間接照明を組み込んだ家具は造作で、掃除道具、リネン類、下着類もここに収納します。
階段下の庭に面したワークスペース
2階への階段は吹抜けの中を上がっていくスケルトン階段です。スチールと木を使って細い部材で構成し、視線の抜けを重視してデザインしました。手で直接触れる手すりには、踏み板と同じナラ材を用い、素材感と色合いを統一。階段下には庭に面してワークスペースを設け、ナラ集成材を用いてデスクを造りました。
階段ホールに面した和室
LDKの近くの和室には仏壇を置き、親戚が大勢集まった時には、障子戸を開け放して板の間と一緒に使えるようになっています。中庭の緑をぼーっと眺めながら、畳の上に横になり、北側の地窓を開ければ心地よい風が畳の上を流れていきます。仲間たちと心置きなく麻雀が楽しめるように掘りゴタツも用意されています。押入れには来客用の布団が入ります。
朝日が差し込む寝室
主寝室は敷地の中で唯一、冬の朝日を取り入れることができる南西側に配置。掃き出し窓はコート(中庭)に面していて、カーテンを開けると緑を楽しむことができます。庇状に2階が約1.3m出ているので、少々の雨の日であれば窓を開けて風を通しながら休むこともできます。クローゼット収納とベットから見やすい位置にテレビカウンターを設けています。
吹抜けと本棚と洗面コーナー
2階には、本棚のある2階ホールを挟んで、ゲストルームとフリースペースがあります。本棚はナラのフローリングと相性のよい色合いのシナランバー合板で造作。吹抜け周りの手すりの役目を兼ねています。隣には洗面コーナー、トイレ、納戸を設けていて、洗面化粧台はお手入れの簡単な人造大理石の洗面器一体型カウンターです。
フリースペースとベランダ
2階のフリースペースは、将来の2世帯にも対応できるように設けられたもので、想定プランをベースにして、窓の位置や大きさ、照明、エアコンの位置を決めています。本棚の上(吹抜との間)にはガラスを入れて、ホールとの間の引込み戸を閉じれば、空調エリアを分けられようにしています。屋上テラスへの階段室は、高さを生かした重力換気にも利用。フリースペースからは、屋根のかかるベランダにも出られるようになっています。
屋上テラス
様々な使い方ができる屋上テラスに上がると、遠くまで視界が開け、下に目を移すとコート(中庭)が見えます。外周の手すりは耐久性のあるステンレスで作っています。
[Photo : Archiplace]