ARCHITECT

既製では叶わない。オーダーメイド家具のススメ

0LDKの桜庭です。前回はリノベーションについてのお話。今回はnagomさんだからこそ出来る造作家具について伺いました。みなさんは造作家具ってご存知ですか?造作家具とは、インテリアショップで売っているような既製の家具でなく、ゼロから作るまさにオーダーメイド家具ということ。実はnagomの茂木さんは、もともと造作家具の設計者として企業に勤められていたという経歴の持ち主。全ての建築家が造作家具を作れるわけではなく、こうした特殊な技術まで持っている方なのです。

造作家具のメリットとは?

桜庭:nagomの茂木さん、よろしくお願い致します。まず、造作家具のメリットってなんでしょう?

茂木:一番の利点は”何でもできる”ということです。四角でも丸でも、黒でも赤でも何でもという感じです。何より、空間にピッタリ収めることができる事が良い点だと思います。空間ロスが少なくなり、完璧なサイズや素材を求めたりすることが可能になるのです。よく賃貸とかでも、もう少し家具が大きければ収納できたのに!というストレスや、家具の間に微妙なスペースが出来てしまう!といった不快感が一切なくなります。これぞ”シンデレラフィット”です。

桜庭:シンデレラフィットですか?

茂木:テレビで収納王子がよく言うじゃないですか(笑)

桜庭:あー、あれですね(笑)要望・意図やコンセプトに対して、真っ直ぐゴールに向かうことが出来るのが造作家具の魅力でもあるのですね。

nagomさんが手掛けたリノベーションとその造作家具事例

”ラウンジリビングの家具” 提供:nagom

桜庭:ちなみに、茂木さんが手掛けられたこちらの事例ですが、ここにも造作家具は使われているのでしょうか?

茂木:はい、もちろんです。ここに写っている家具のほとんどが私の設計による造作家具です。この事例は、新築住宅のリビングで内装工事と家具設計を担当しました。不動産会社の社長様のご自宅で、応接室としても使用するリビングのため、ホテルラウンジのように高級感あるデザインにしています。

桜庭:え、これぜんぶ造作家具ですか!?すごい……。

茂木:はい、そうです。それぞれの家具の面材には、天然木ウォールナットの突板と無垢材を組み合わせています。化粧合板では加工が難しい凹凸感ある扉や、木目方向を変えた天板で、華美ではない高級感を追求しています。
センターテーブルの四方には、角面取りを施して安全性と耐久性を高めています。ソファとテーブルのアイアン脚部には、黒皮風塗装を施して、デザインの統一性を出したりもしています。また、光の当たり方によってムラ感を変化させるようにしました。こういった細かなディテールを積み上げて、質を高められるのがフルオーダーである造作家具の醍醐味ですね。

桜庭:建築と家具の両方に対して知識があるからこそ成立するわけですね。さすがです。たしかに、フローリングと家具の色合いをピッタリ合わせていたり、統一感があって本当に美しい空間だなと思います。羨ましいですね、ここに住めるって。

建築家・家具設計者としてのルーツと強み

普段は2児の父でもある茂木さん。背景に見えるのは子供の遊び場。

桜庭:ちなみに、家具の設計を始めた理由というのはありますか?

茂木:それを話すと長くなります(笑)
理由といいますか、私が大学生の時代は就職氷河期だったのです。バブルが弾けて建築業界がどん底でした。そういう理由で両親や周りからは、建築業界に進むことを反対されていた経緯がありまして。なので、建築を諦めてプロダクトデザインを勉強していたのですが、建築に行きたい気持ちが強かったということもあり、内装にまつわる仕事を探していたら、オーダー家具の設計に従事出来ることになりました。
プロダクトデザインを勉強していた時、研究室に配属になったのですが、そこでも家具をメインで学んでいました。木製の家具や椅子を研究する場所にいたので、家具という道筋は自然な流れだったとも思います。

桜庭:なるほど、そういう経緯があったのですね。

茂木:そこで家具の設計をしていたら、「この空間をもっとかっこよくしたいな」とか「そもそもこの場所にはリビングが必要では?」と思うことが多くありました。
新築や改修の現場に行く事が多く、度々建築を見る機会があったのですが「自分でもっと良いものを建ててみたい!」と思うことがありました。

桜庭:さすが、茂木さん!それが原動力だったのですね。

茂木:はい。もっと良いものが作りたいと思ったことが、建築を志した理由のひとつです。20代の若い頃ですね。ちょうど、桜庭さんと同じ26歳位の頃に家具屋を退職したのですが、そんな生意気なことを言っていました(笑)

桜庭:そうだったのですね(笑)

茂木:私の特徴としては、造作家具が出来るので対応範囲が広いことです。普通の設計事務所だと、どうしてもリフォームやリノベーションが相談のスタートだと思います。ご相談ケースによってはちょっと家具を作れば済む場合もあるので、すぐ解決する方法もご提示できると思います。家具を不得意な設計事務所さんも多いので、そこが私の強みだと思います。

桜庭:え、そうなんですか?

茂木:そもそも家具についてあまり知らないこともあり、家具屋さんにお任せしてしまうところが多いのではないでしょうか。それは家具屋で働いているときに感じました。建築にどうしても労力がかかってしまったり、法律やお金にも大きく関わるので、なかなか難しい側面があるように思います。

桜庭:カッシーナなどハイエンド家具の揃うショップから、お求め安いインテリアショップなど専門店の多いイメージですが、ここもうちょっとサイズが小さければ!とか、求める最適解を見つける事って難しいですもんね。なければ作ってしまおうというのは、ユーザー目線でも頼りになります。
いやー、茂木さんとお話をすると色々勉強になります。

事例:ラウンジリビングの家具

提供:nagom

nagomさんは、心休まる空間造形からホテルライクな美しい設計まで出来て、かつ造作家具で一貫したコンセプトや生活機能を表現できる方。お話しを聞けば聞くほど、わたしも将来はこういうマイホームに住みたいなぁと想像が膨らんでいます。大変貴重で興味深いお話ばかりでした。ありがとうございました!

nagom 新築設計、リノベーション設計、家具設計、店舗設計などを行う。神奈川を中心に全国対応可能な建築設計事務所。

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