閑静な住宅地に建つ平屋建ての住宅
クライアントからは、近くには森林が広がる自然溢れる気持ちよい地域ではあるが、反対に冬の寒さが厳しいところでもあり、四季を通して快適な住環境を実現して欲しいと要望された。
単調な空間構成でありながら、仕上げやレベルの変化、ラジエターやアイランドキッチンによる視覚効果がアクセントなり間延びせず、つながりのある個室にとらわれない空間は、どこにいても家族の気配を感じることができ、目が合えば笑顔や会話が生まれる温もりのある生活をもたらす。恵まれた敷地に平屋建てというゆとりがもたらすこの空間は、改めて住まいの在り方を見つめ直すきっかけであり、「○LDK」という概念にとらわれない新たな住まいの形が提案出来たと思う。
2面で異なる顔を持つファサード
北側道路側は完全に閉じた外観になっており、一見不思議なボリューム感に驚きを覚える。東側は大きな開口と板塀で構成されており、角地に建ちなから2面で全く違う表情を持つ。外壁には外断熱が採用されており、省エネにも配慮されている。
広々とした駐車場&中庭
大きな板貼りの引き戸を開けると、広い駐車場兼中庭が現れる。建物側にはテラスと大きな庇が設けられており、建物と一体で使用できる。現在は一面芝生が貼られ、プライバシーの守られた大変気持ちのよい空間となっている。
大きなスチールサッシュ
メインの開口はスチールの特注サッシュになっており、開放感とアルミにはない力強さを併せ持つ。また、玄関ポーチに設けられた門扉は解体前の既存住宅のもので、以前の建物の思い出を継承するとともに、どこか懐かしい雰囲気の外観ともマッチしている。
玄関から中庭へ続く通り土間
玄関から中庭へダイレクトに抜けられるように通り土間をつくり建物を分割する。この場所は玄関でもあるが、趣味の雑貨などを展示して来客を楽しませるギャラリーとしても機能する。天井にはトップライトを設けて圴一で明るい空間となり、LDKへもその光が降り注ぐ。中庭側には家庭菜園用に流し台も設けている。
扉のない空間とPSヒーター
空間全体を建具のない大きなワンルームとし、その中心に大きなラジエターを設置し冷暖房を行う。ひとつながりという特性を活かし、風や音のしない放射熱は建物全体を均一に夏涼しく、冬温かい環境へと変化させる。また、熱源にヒートポンプを利用し、外断熱を採用することで、省エネで地球環境にもやさしい仕様になっている。
書斎と寝室
書斎スペースは床のレベルを落とし、仕上げをモルタルとして他の部屋と差異をつけている。オークの無垢板のカウンターを設置して、庭を見ながらデスクワークができる。LDKとはルーバー状のラジエターで区切られており、程よい距離感が得られている。隣の寝室とのRCの打ち放しの壁にもスリットを設けてつながりを重要視している。
天井には電動開閉式のトップライトを設置し、天井に溜まった暖かい空気を排出し効率の良い換気が行える。
水回りと家事コーナー
キッチンのすぐ後ろには水回りが設けられており、家事が大変しやすい動線計画になっている。家計簿などちょっとした作業のできる専用デスクも造りつけている。
[Photo : 太田 拓実]