敷地の可能性を引き出した長寿命住宅
住まいに対する強い思い入れを持たれているベルギー人のご主人とワインがご趣味の奥様、二人の小さな子供さんの住宅です。2階建用の雛壇状に造成された敷地の擁壁の一部と外階段を解体撤去し、地下レベルに入り口を設けた地下1階地上2階建てとして計画。
地中障害物や高度斜線の制約の中で、高さをフルに使って敷地のポテンシャルを引き出し、部屋の用途に合わせた天井高さやスキップフロアの構成で、空間に変化とメリハリをつけました。
季節の移り変わりや時間によって変化する太陽の光を、木製サッシや樹脂サッシ、フルオープンサッシ、トップライト、ドライエリアから取り込み、それぞれの場所で多様な光を感じられる住まいです。ところどころに遊び心を盛り込んだ高性能で高耐久な長寿命住宅でもあります。
外観は、雛壇状に造成された敷地の地下にあたる部分の擁壁を一部解体して、道路レベルから直接建物に入れるアプローチ動線を地階レベルに設けて、地下1階・地上2階建の混構造として計画。木造部分の外壁は、形と表情の違うタイルで1、2階を貼り分けた柔らかな色調のタイル貼。屋根はフラットで、階段で上がれる屋上テラスになっています。
シンボルツリーの見える玄関ポーチ
地階レベルにあたるアプローチ空間。ファイバーグレーチングの門扉を開けるとシンボルツリー(シマトネリコ)が見えるポーチで、手前には目立たないように自転車置き場が隠れています。壁はベージュ色のボーダータイル仕上げで、床はグリーン系の御影石貼。玄関扉は表面に無垢の板を張りダークブランの着色保護塗料で仕上げたスチール製、防犯ガラスが左右に入っています。
客を迎える片持ち階段
玄関扉を開けてホールに入ると、上からの柔らかな光に照らさた1階への階段が迎えてくれます。床は下足部分が御影石貼、上足部分が オーク三層無垢フローリング(ホワイト入) で、正面にシューズインクロークがあります。階段部分は、空調効率のために透明の強化ガラスで仕切りを設けていて、階段下はショーケースとして使います。奥には1階へのもう一つの階段があります。
LDK
地下からの階段を上がると約28畳の広さのLDKです。天井高は2.9mでフルオープンの木製サッシ(キマド・ドルフィン)を全開すると、半地下のドライエリアへ繋がったデッキテラスと一体となります。デッキテラスにはプールを出して子供を遊ばせることもでき、2階のバルコニーが雨や日差しを遮る庇となってくれています。リビング横の一段上がったところは約5畳のワークスペースです。
軽い食事も取れるアイランドキッチン
キッチンの横には、一段高くなった水廻りや2階、玄関にも行ける地階に下りる階段があります。フルオーダーのアイランドキッチンは、簡単な食事のできるテーブルとしての機能も備えています。キッチンの背面は家電や食器、ゴミ箱を隠せる造り付け収納で、シンク側にはGAGGENAUの食洗機をビルトイン。木製サッシとの間はガラスの床で、地下の予備室に採光しています。
疲れを癒すリラクゼーション空間
洗面室と浴室はガラスで仕切られた一体空間。雨の日も使える物干バルコニーが外にあり、目隠し格子で光と風を取り入れながらプライバシーを守ります。浴槽は家族でバスタイムを楽しめるJAXON・ジャクソンのジェット&ブロアバス。高断熱・高気密の樹脂サッシ(非防火)がこの広々空間の快適性を支えています。洗面ボウルは二人で同時に使える幅広タイプで、水かかり部分などに貼ったお気に入りのモザイクタイルがリラクゼーション空間に彩りを添えています。
半地下の趣味室
半地下の趣味室は、ドライエリアに面した窓と、竹を植えたコート1に面した窓から採光・通風できる落ち着いた部屋です。壁と天井は調湿機能のある珪藻土左官仕上げで、バームクーヘンのような小口を見せたロシアンバーチ積層合板の本棚をデザインして、壁に造り付けています。 窓辺のベンチ収納は、1階のデッキテラスへ繋がるドライエリアの出入り口ステップを兼ねていて、地下と1階は回遊性で結ばれています。
階段 洗面 トップライト
水廻りのレベルと2階を繋ぐ階段は、風や光や視線が通るスケルトン階段で、上部のトップライトからの時間とともに変化す光に照らされます。2階洗面コーナーは、この光の入る吹抜けに面していて、 隣地の緑を切り取る窓を開けると、風が自然に抜けていきます。2階の窓は高断熱・高気密のエクセルシャノン EXCEL SHANONの樹脂サッシ(防火) です。
子供室
当面はプレイルームとして使う子供スペースは、将来2室に仕切ることを想定して、窓やクローゼットの位置を決めて、エアコンを設置しています。 片側の部屋には、窓辺にデスクと本棚を造作で造りつけています。ナラのフローリングや棚やデスク明るい木の色に合う、ライトブルーをイメージカラーとして壁もビニルクロスを選定しました。
屋上
この住まいはヨーロッパの住宅のように、適切に手入れしながら100年以上(3世代)住み続けらること目指した住宅です。構造にはスケルトンインフルの考え方から、SE構造を採用し、外壁には耐久性の高いタイルを貼っています。親しい友人達とのパーティを行い、将来緑化の可能性もあるフラットルーフの屋根材には、信頼性と耐久性の高い金属防水工法(スカイプロムナード)を採用しています。
[Photo : Archiplace]